書きたいことって、
~嵐の夜、犬とマスターの物語。~
<第一章、出会い>
出会いってのはいつも突然だ。
そんなの信じるガラじゃないし、そう願ったことも
ない。
だけどこれだけは運命なんじゃないかって思わせられる
瞬間が希にある。
仕事帰り。
車の給油ランプの点灯に気づき、深夜営業の
ガソリンスタンドを目指していつもとは違うルートをとる夜。
夏の夕立なんて風物詩みたいなもんだけど、
こんな時間に突然のどしゃ降りの嵐なんてね。
"マスター"『ちっ、嫌なぁ空模様だぜ...』
仕事あがり、腹も減ったしなんだか今夜は少し眠い。
何より早く帰ってビールが飲みたい。
さっさと済ませて家に帰りたい。
深夜の暗闇の中にこうこうと光るスタンドのライト
に照らせれて、どしゃ降りの雨の滴が凄い音をたてて
屋根からこぼれ落ちる。
そしてここにきて、さらに雷かよ...
"マスター"『早く帰ろう。』
ピカッと光る空から車に視線を戻したその時だった。
今振り返れば、まさに雷に打たれたような出会いだったかも
しれないな。
"マスター"『犬かよ。』
"マスター"『ちっ、相変わらず女、子供は寄ってこねぇのに、
動物だけは寄ってきやがる。』
首輪がある。
うちの馬鹿犬と違って毛並みも良い。
近所の犬が雷と雨の轟音に怯えて逃げて来たのであろうか。
そんなところであろう。
だけどな犬よ、世の中そんなに甘くないぜ。
外の世界が見たくって、自分で飛び出したんだろ?
だったら自分の力で帰るんだな。
っと心のなかでハードボイルドなセリフを
思い浮かべながらも、ここで犬と向き合うこと、
かれこれ30分。
犬と向き合い無言で立ち尽くす俺を、
スタンドに入っては出てく車の人達が変な目で俺を
見てる。
どうしたら良いのか?
ボチボチ俺の喉もアルコールを欲して
限界だ。
携帯を取ろうと運転席のドアを開けた一瞬の隙を
つかれた。
"マスター"『あぁ!! ドアのところに来てるしー!』
『ま、まさか!? 乗ろうって気かお前?』
"マスター"『うるせぇ』
その時深夜の公道を物凄いスピードでクラクションを
鳴らしながら暴走する車に気をとられたのが過ちだった
っけ。
はっとして運転席に視線を戻した時にはもう遅かった。
『もう乗ってるし...』
『出る気ねぇし...』
どうしたら良い?
考えろ俺。
さらにおかしな光景になってる真夜中のガソリンスタンド。
いい加減、周りの突き刺さるような視線も完全に俺を変態だか、
ドの過ぎた世の中からシャットアウトされた動物愛好家
扱いしてるみたいな。
ダメだダメだ!
俺にだって一応世間体がある。
この状況はまずいな、このまま朝まで
このずぶ濡れの犬と朝を迎えるのか?
つうか俺のマイカーで💩とかしねぇよな?
色々な思いが走馬灯のように俺の頭を交差する。
犬...犬...、犬のお巡りさん。
"マスター"『そうか!! 警察だ!』
警察なら迷い犬を預かってくれるって聞いたことあるなぁ。
迷わず#104で検索。
『熊谷警察署の電話教えて下さい。』
プロのお姉さんが間髪いれずダイヤルを教えてくれる。
便利だ!
この時ほど素晴らしいシステムだと感じた事はない。
と、数年後思うのだと確信した。
プルルル...
クソ、警察なんて苦手なのに何で電話してるんだ。
カシャッ
"警察官"『ハイ、熊谷警察署です』
"マスター"『あの変なことお聞ききしますが、迷い犬
とかって預かってくれたりしますか?今、市内のガソリン
スタンドで犬が離れなくなってしまって...
首輪もしてるし飼い犬だとは思うのですが...』
"警察官"『あらあら大丈夫、預かれますよ!』
"マスター"『良かった、今から届けますので宜しくお願い
致します。』
『あの、僕、猪野と申します。』
"警察官"『わかりました!この天気ですのでお気をつけて
いらしゃって下さい。』
何だよ、警察、スゲェ良いやつじゃねぇかよ。
よし、今までの態度を悔い改めよう。
ともあれとりあえず犬、これじゃあ運転も出来ねぇから
せめて助手席に行ってくれと、犬を動かしてみる。
"犬"『嫌だ嫌だ!降りたくない!』
"マスター"『大丈夫だよ、今から安全なところに連れて
行ってあげるんだから。』
なんか、イタズラ目的の幼児誘拐犯みたいになってきて
しまった...
"マスター"『大丈夫だから、頼むそっち側に行ってくれ。』
一向に動こうともしない犬に苛立ちを隠せない俺。
犬よ、舐めんな!
これでもマスター、元・米専門の大型トラック運転手。
いくらテメェが中型犬でも俺が本気出せば、ヒョイって
持ち上げちまうぜぇ?
よし!
"マスター"『あっ、ダメ...』
クソ、トラック降りて何年だ?
俺の鍛えぬかれた鋼の身体はもうないんだって
3秒で気づかされてしまったぜ。
筋トレしよ。
そういう意味では犬よ、貴様に感謝だな。
とか色々やってるうちに気づいたら自ら助手席に
移動する犬...
"マスター"『何だよ、お前。動けるなら早く行ってくれ
ればいいじゃんかよー』
『何だよ、お前まさか俺のこと哀れとか思ったんじゃ
ねぇだろうな!』
いや、不味い心の声が少し出てしまった。
給油中の若いカップルがまた俺を不審な目で見てやがる。
とにかくだ、犬よ、ここを出よう!!
未だ降り止む気配のない雨と雷鳴の中、俺達はこの
ガソリンスタンドを後にするのであった...
<第三章 旅立ち>
"マスター"『おい犬よ、お前少しリラックスしてるだろ?』
真夜中にどしゃ降り、とてつもなく視界の悪い熊谷の街を
ただひたすらに車を走らす。
その心は...
💩されないかとても心配。
だけどもまぁ、穏やかで心優しそうな犬だわ。
暴れもしない。
こんな夜も悪くない。
若い時、車の免許とりたての頃を思い出すなぁ。
ただただ走りたくて、こんな嵐の夜にかぎって
どっかに出掛けたくなる。
犬よ、俺にそんなおセンチで、盗んだバイクで走りだす
的な、淡い青春の思い出まで思い出させてくれるのか...
"マスター"『このまま二人で海にでも行ってみようか?』
"犬"『貴方とだったら何処にでも行けそうな気がするワン...』
嗚呼、昨今じゃあ中学生でも吐かねえような台詞、
想像しちまったわ...
よし、疲れてるな俺。
な~んつってねぇってさぁ、
"マスター"『犬!お前、さては眠いだろ!?』
というか寝たしね。
まぁ可愛いもんだ、ジャンゴの常連さん達は断然
猫派が多いけど、俺は犬派。
ここまで俺のこの業務とはまったく関係のないブログに
付き合ってくれた貴方だから本音を述べましょう。
マジで家に連れて帰りてぇ!
首輪をしている。
馬鹿な俺だって人様の者だってわかるさ。
でもよ、好きになっちまったもんはしょうがねぇじゃんか!
もういいや...
俺のものにしてしまおう。
生涯消えない罪の十字架を背負いながら生きる覚悟は
出来た。
警察署から我が家に向けて車の進路を変えようとした
その時だった...
ムクッ
"マスター"『何だ、起きたのか?』
"犬"『あれ? ここは何処ワン? 知らないとこだワン。』
『怖いワン。ご主人様~ワン!!』
"マスター"『そんな顔をするな...、』
『そうだよな、俺にも俺を待つ汚い犬がいる...』
『お前にだってずっと一緒にいてくれた飼い主が
いるんだもんな。
大丈夫!きっと家族のもとに帰れるから...』
『俺が必ずや帰してあげるから!!』
"マスター"『あ、そうだ! お前何て名前なんだ?』
当然のことながら俺の言葉なんて犬が理解出来る
はずはない。
でもさ、もうあと少しで熊谷警察、あとほんの数分で終わって
しまうであろう俺達理解の旅が...
いや、それは俺のエゴか...
とにかく寂しくて、せめて名前ぐらい。
俺の思い出の中に残させてくれってさ...
"マスター"『馬鹿な人間だぜ。』
名前を問うことで無理にでも犬との繋がりを
作ろうって自分がとても滑稽で女々しく感じ
たもんだっけね。
<第四章 別れ>
ガソリンスタンドからこの熊谷の警察署までのたかが
数キロメートル。
その身近な距離の中でどれだけ俺は心から苦しんでいたので
あろう?
運命ってのは残酷なもんだけど、今なら心から
胸を張って言える。
"マスター"『犬よ、俺は君が大好きだー! ! ! ! ! ! 』
でもよ、寂しいが別れの時さ。
これでお前の愛する家族のもとに帰れる。
お前にはわからないだろうけど、
"マスター"『俺、お前のこと本当に大好きだよ! 』
熊谷警察署に車を停める。
涙がつたってなかなか力の入らない腕に
鞭をうってシフトレバーをパーキングにする。
足取りは重いが警察署の中へ、
"マスター"『あの、先程迷い犬の件で御電話した猪野
なんですけど...』
"警察官"『ああどうも! 大変でしたね。』
『今ワンちゃんお預かりしますね。』
二人の警察官と共に雨の降るなか、傘もささずに
俺の車に向かい、キーレスで車のロックを解除する。
するとどうだ、車の助手席のカーペットから離れたく
ないって、力強くしがみつたいて、俺の車から降りようと
しない名も知らない犬がいるではないか。
"警察官"『ほらワンちゃん、大丈夫だから降りなさい。』
"マスター"『大丈夫、これで家族のもとに帰れるんだよ』
『そんな顔をするな! 俺はお前の事は絶対に忘れない!!』
『元気でな....』
涙をにじませながら犬に話かける俺をみて警察官は
苦笑いしていたが、それでもいい。
俺達には俺達にしかわかならい時間があったんだ。
お前もきっと俺の事、好きでいてくれたんだな。
だからそんな寂しそうな顔しないで。
これはさ、これで。
それが運命だったのかな。
真夏なのに、嫌に冷たい雨にうたれながら何度も何度も
振り返って俺を見ながら警察署に入っていく犬。
これがあいつを見た最後の瞬間だった。
傘もささずに冷たい雨にうたれながら呆然と立ち尽くす俺。
"警察官"『あのぅ、あの! 猪野さん、申し訳ないの
ですが少々書類にご記入お願いしたいのですが...』
"マスター"『あぁ、すみません。わかりました。』
規定に従い言われた通りに記入欄に文字を書きこんでいく。
もはや内容なんてどうでもよかった。
"警察官"『では猪野さん、最後にこちらに承認のサインを
お願いします。』
『もし飼い主が見つからない場合は、保健所で処分されるかも
しれないというのを了承して頂くものですので。』
"マスター"『あ、はい...
ほんの数時間が何ヵ月にも想えた。
疲れた。
帰ろう。
そうだ帰ってビール飲みたかったんだっけか?
もうそんな事はどうでもいい。
この胸につかえるしこりはなんだ?
ずっと頭から離れないあの言葉、フレーズ。
警察官の言ってた"飼い主が見つからない場合は
保健所で処分"
?? ?
すぐさまジャンゴのママに確認の電話をした。
"マスター"『あぁ美佐恵さん? お疲れ様。
あの聞いてほしいんだけど...』
"美佐恵さん"『うん、そうだねぇ、猪野くんの思ってる
通りだと思うよ。警察にもう一度話したら?
大変だったね、お疲れ様。』
F●CK !! ポリス!! 保健所!!
"マスター"『飼い主が見っかんなきゃ、あいつ殺されるって
ことかよ!!?? 』
『社会のルールだか、国の法律だかしらねぇけど、俺は
許さねぇぞ!』
電話を切り、携帯の着信履歴からすぐに警察署に電話した。
もちろん誰が悪いわけでもない。
俺だってもういい大人だ。
なんて言っていいかわからなかったし、
正直考えてもいなかった。
だけどとっさに出てしまった言葉は...
『あの、飼い主見つからなかったら、
俺が引き取ります!!』
あれから随分と時が経った。
今も何も連絡がないって事は、きっとあいつは家族の
ところに帰れたんだろうね。
良かった。
君にとってはそれが一番幸せなことだ。
俺はというとね、
少しだけ寂しい。
それが本音。
歳を重ねて大人になって、ガキの頃からの友達や仲間
ともなかなか会えなくなって、仕事に追われたり、家族を
もったり、馬鹿してたあの頃を忘れかけて...
何のために生きてるのかわからなくなって...
それでも君との出会えたことで、忘れかけてた何かを、
少しだけ取り戻せた気がしました。
"マスター"『明日もまた頑張ろう。』
『ありがとう、犬。』
終わり。
※この物語は多少、いや、かなりの付け足しはあります
が紛れもない真実の物語です。
良いことしたからかなぁ。
心優しきお客様達や皆さんから、色んなプレゼント頂きました!
まずは、M子ちゃんにいただいた、クロワッサン鯛焼き。
だったけな?
今だから正直に言いましょうM子ちゃん、
ママに全部食べられました!
まぁ俺があげたんだけどね。
ありがとー!
Hさんからもらったナボナというお菓子。
かなりの有名なお菓子らしいのだが...
甘味に興味のなかったマスター、まったく知らず。
ただ!いただきましたら本当に美味しかったー
H.Hさんごちそうさまでした!
そして、本当に有難し。
またしてもM子穣さまからのプレゼント。
ふなっしーカルパス!!
間違えることなく旨い!
この人は...
ミュージシャンだけでなく、こっちのほうでも食って
いけるんではないだろうか!?
ジャンゴでもお馴染みの人気者ベーシスト、
東郷さんのオリジナル・ライ麦パンだー!!
スコーンやカンパーニュに続きの新作。
ヤバイ!
本人の言う通りに酒のあてにもピッタリ!
みんな買いましょうー
と、このブログだけ初めて見た方。
なんの店?と思うでしょうが...
ジャンゴは美味しいお酒とグッドな生演奏、
楽しい仲間のミュージック・バーです。
どうぞ、お気軽にいらしゃって下さいませ!
バー・ジャンゴのホームページはこちらから。
みんなに伝えたい事、
お酒の事や
紹介したいミュージシャン、
あの熱いライブ、
そんなジャンゴをお見せしたくって
いつもブログ書いてます。
なのに、
それなのに俺は...
最近魚の事しか書いてな~い!!
それでもまた関係のないこと書こうと
してる俺。
でも、許して下さい。
今回はどうしても伝えたかった切ない物語。
~嵐の夜、犬とマスターの物語。~
出会いってのはいつも突然だ。
そんなの信じるガラじゃないし、そう願ったことも
ない。
だけどこれだけは運命なんじゃないかって思わせられる
瞬間が希にある。
仕事帰り。
車の給油ランプの点灯に気づき、深夜営業の
ガソリンスタンドを目指していつもとは違うルートをとる夜。
夏の夕立なんて風物詩みたいなもんだけど、
こんな時間に突然のどしゃ降りの嵐なんてね。
"マスター"『ちっ、嫌なぁ空模様だぜ...』
仕事あがり、腹も減ったしなんだか今夜は少し眠い。
何より早く帰ってビールが飲みたい。
さっさと済ませて家に帰りたい。
深夜の暗闇の中にこうこうと光るスタンドのライト
に照らせれて、どしゃ降りの雨の滴が凄い音をたてて
屋根からこぼれ落ちる。
そしてここにきて、さらに雷かよ...
"マスター"『早く帰ろう。』
ピカッと光る空から車に視線を戻したその時だった。
今振り返れば、まさに雷に打たれたような出会いだったかも
しれないな。
"マスター"『犬かよ。』
動物だけは寄ってきやがる。』
首輪がある。
うちの馬鹿犬と違って毛並みも良い。
近所の犬が雷と雨の轟音に怯えて逃げて来たのであろうか。
そんなところであろう。
だけどな犬よ、世の中そんなに甘くないぜ。
外の世界が見たくって、自分で飛び出したんだろ?
だったら自分の力で帰るんだな。
っと心のなかでハードボイルドなセリフを
思い浮かべながらも、ここで犬と向き合うこと、
かれこれ30分。
犬と向き合い無言で立ち尽くす俺を、
スタンドに入っては出てく車の人達が変な目で俺を
見てる。
どうしたら良いのか?
ボチボチ俺の喉もアルコールを欲して
限界だ。
携帯を取ろうと運転席のドアを開けた一瞬の隙を
つかれた。
"マスター"『あぁ!! ドアのところに来てるしー!』
『ま、まさか!? 乗ろうって気かお前?』
その時深夜の公道を物凄いスピードでクラクションを
鳴らしながら暴走する車に気をとられたのが過ちだった
っけ。
はっとして運転席に視線を戻した時にはもう遅かった。
『もう乗ってるし...』
考えろ俺。
さらにおかしな光景になってる真夜中のガソリンスタンド。
いい加減、周りの突き刺さるような視線も完全に俺を変態だか、
ドの過ぎた世の中からシャットアウトされた動物愛好家
扱いしてるみたいな。
ダメだダメだ!
俺にだって一応世間体がある。
この状況はまずいな、このまま朝まで
このずぶ濡れの犬と朝を迎えるのか?
つうか俺のマイカーで💩とかしねぇよな?
色々な思いが走馬灯のように俺の頭を交差する。
犬...犬...、犬のお巡りさん。
"マスター"『そうか!! 警察だ!』
警察なら迷い犬を預かってくれるって聞いたことあるなぁ。
迷わず#104で検索。
『熊谷警察署の電話教えて下さい。』
プロのお姉さんが間髪いれずダイヤルを教えてくれる。
便利だ!
この時ほど素晴らしいシステムだと感じた事はない。
と、数年後思うのだと確信した。
プルルル...
クソ、警察なんて苦手なのに何で電話してるんだ。
カシャッ
"警察官"『ハイ、熊谷警察署です』
"マスター"『あの変なことお聞ききしますが、迷い犬
とかって預かってくれたりしますか?今、市内のガソリン
スタンドで犬が離れなくなってしまって...
首輪もしてるし飼い犬だとは思うのですが...』
"警察官"『あらあら大丈夫、預かれますよ!』
"マスター"『良かった、今から届けますので宜しくお願い
致します。』
『あの、僕、猪野と申します。』
"警察官"『わかりました!この天気ですのでお気をつけて
いらしゃって下さい。』
何だよ、警察、スゲェ良いやつじゃねぇかよ。
よし、今までの態度を悔い改めよう。
ともあれとりあえず犬、これじゃあ運転も出来ねぇから
せめて助手席に行ってくれと、犬を動かしてみる。
"犬"『嫌だ嫌だ!降りたくない!』
"マスター"『大丈夫だよ、今から安全なところに連れて
行ってあげるんだから。』
なんか、イタズラ目的の幼児誘拐犯みたいになってきて
しまった...
"マスター"『大丈夫だから、頼むそっち側に行ってくれ。』
一向に動こうともしない犬に苛立ちを隠せない俺。
犬よ、舐めんな!
これでもマスター、元・米専門の大型トラック運転手。
いくらテメェが中型犬でも俺が本気出せば、ヒョイって
持ち上げちまうぜぇ?
よし!
"マスター"『あっ、ダメ...』
クソ、トラック降りて何年だ?
俺の鍛えぬかれた鋼の身体はもうないんだって
3秒で気づかされてしまったぜ。
筋トレしよ。
そういう意味では犬よ、貴様に感謝だな。
とか色々やってるうちに気づいたら自ら助手席に
移動する犬...
"マスター"『何だよ、お前。動けるなら早く行ってくれ
ればいいじゃんかよー』
『何だよ、お前まさか俺のこと哀れとか思ったんじゃ
ねぇだろうな!』
いや、不味い心の声が少し出てしまった。
給油中の若いカップルがまた俺を不審な目で見てやがる。
とにかくだ、犬よ、ここを出よう!!
未だ降り止む気配のない雨と雷鳴の中、俺達はこの
ガソリンスタンドを後にするのであった...
<第三章 旅立ち>
"マスター"『おい犬よ、お前少しリラックスしてるだろ?』
真夜中にどしゃ降り、とてつもなく視界の悪い熊谷の街を
ただひたすらに車を走らす。
その心は...
💩されないかとても心配。
だけどもまぁ、穏やかで心優しそうな犬だわ。
暴れもしない。
こんな夜も悪くない。
若い時、車の免許とりたての頃を思い出すなぁ。
ただただ走りたくて、こんな嵐の夜にかぎって
どっかに出掛けたくなる。
犬よ、俺にそんなおセンチで、盗んだバイクで走りだす
的な、淡い青春の思い出まで思い出させてくれるのか...
"マスター"『このまま二人で海にでも行ってみようか?』
"犬"『貴方とだったら何処にでも行けそうな気がするワン...』
嗚呼、昨今じゃあ中学生でも吐かねえような台詞、
想像しちまったわ...
よし、疲れてるな俺。
な~んつってねぇってさぁ、
"マスター"『犬!お前、さては眠いだろ!?』
というか寝たしね。
まぁ可愛いもんだ、ジャンゴの常連さん達は断然
猫派が多いけど、俺は犬派。
ここまで俺のこの業務とはまったく関係のないブログに
付き合ってくれた貴方だから本音を述べましょう。
マジで家に連れて帰りてぇ!
首輪をしている。
馬鹿な俺だって人様の者だってわかるさ。
でもよ、好きになっちまったもんはしょうがねぇじゃんか!
もういいや...
俺のものにしてしまおう。
生涯消えない罪の十字架を背負いながら生きる覚悟は
出来た。
警察署から我が家に向けて車の進路を変えようとした
その時だった...
ムクッ
"マスター"『何だ、起きたのか?』
"犬"『あれ? ここは何処ワン? 知らないとこだワン。』
『怖いワン。ご主人様~ワン!!』
"マスター"『そんな顔をするな...、』
『そうだよな、俺にも俺を待つ汚い犬がいる...』
『お前にだってずっと一緒にいてくれた飼い主が
いるんだもんな。
大丈夫!きっと家族のもとに帰れるから...』
『俺が必ずや帰してあげるから!!』
"マスター"『あ、そうだ! お前何て名前なんだ?』
当然のことながら俺の言葉なんて犬が理解出来る
はずはない。
でもさ、もうあと少しで熊谷警察、あとほんの数分で終わって
しまうであろう俺達理解の旅が...
いや、それは俺のエゴか...
とにかく寂しくて、せめて名前ぐらい。
俺の思い出の中に残させてくれってさ...
"マスター"『馬鹿な人間だぜ。』
名前を問うことで無理にでも犬との繋がりを
作ろうって自分がとても滑稽で女々しく感じ
たもんだっけね。
<第四章 別れ>
ガソリンスタンドからこの熊谷の警察署までのたかが
数キロメートル。
その身近な距離の中でどれだけ俺は心から苦しんでいたので
あろう?
運命ってのは残酷なもんだけど、今なら心から
胸を張って言える。
"マスター"『犬よ、俺は君が大好きだー! ! ! ! ! ! 』
でもよ、寂しいが別れの時さ。
これでお前の愛する家族のもとに帰れる。
お前にはわからないだろうけど、
"マスター"『俺、お前のこと本当に大好きだよ! 』
熊谷警察署に車を停める。
涙がつたってなかなか力の入らない腕に
鞭をうってシフトレバーをパーキングにする。
足取りは重いが警察署の中へ、
"マスター"『あの、先程迷い犬の件で御電話した猪野
なんですけど...』
"警察官"『ああどうも! 大変でしたね。』
『今ワンちゃんお預かりしますね。』
二人の警察官と共に雨の降るなか、傘もささずに
俺の車に向かい、キーレスで車のロックを解除する。
するとどうだ、車の助手席のカーペットから離れたく
ないって、力強くしがみつたいて、俺の車から降りようと
しない名も知らない犬がいるではないか。
"警察官"『ほらワンちゃん、大丈夫だから降りなさい。』
"マスター"『大丈夫、これで家族のもとに帰れるんだよ』
『そんな顔をするな! 俺はお前の事は絶対に忘れない!!』
『元気でな....』
涙をにじませながら犬に話かける俺をみて警察官は
苦笑いしていたが、それでもいい。
俺達には俺達にしかわかならい時間があったんだ。
お前もきっと俺の事、好きでいてくれたんだな。
だからそんな寂しそうな顔しないで。
これはさ、これで。
それが運命だったのかな。
真夏なのに、嫌に冷たい雨にうたれながら何度も何度も
振り返って俺を見ながら警察署に入っていく犬。
これがあいつを見た最後の瞬間だった。
傘もささずに冷たい雨にうたれながら呆然と立ち尽くす俺。
"警察官"『あのぅ、あの! 猪野さん、申し訳ないの
ですが少々書類にご記入お願いしたいのですが...』
"マスター"『あぁ、すみません。わかりました。』
規定に従い言われた通りに記入欄に文字を書きこんでいく。
もはや内容なんてどうでもよかった。
"警察官"『では猪野さん、最後にこちらに承認のサインを
お願いします。』
『もし飼い主が見つからない場合は、保健所で処分されるかも
しれないというのを了承して頂くものですので。』
"マスター"『あ、はい...
ほんの数時間が何ヵ月にも想えた。
疲れた。
帰ろう。
そうだ帰ってビール飲みたかったんだっけか?
もうそんな事はどうでもいい。
この胸につかえるしこりはなんだ?
ずっと頭から離れないあの言葉、フレーズ。
警察官の言ってた"飼い主が見つからない場合は
保健所で処分"
?? ?
すぐさまジャンゴのママに確認の電話をした。
"マスター"『あぁ美佐恵さん? お疲れ様。
あの聞いてほしいんだけど...』
"美佐恵さん"『うん、そうだねぇ、猪野くんの思ってる
通りだと思うよ。警察にもう一度話したら?
大変だったね、お疲れ様。』
F●CK !! ポリス!! 保健所!!
"マスター"『飼い主が見っかんなきゃ、あいつ殺されるって
ことかよ!!?? 』
『社会のルールだか、国の法律だかしらねぇけど、俺は
許さねぇぞ!』
電話を切り、携帯の着信履歴からすぐに警察署に電話した。
もちろん誰が悪いわけでもない。
俺だってもういい大人だ。
なんて言っていいかわからなかったし、
正直考えてもいなかった。
だけどとっさに出てしまった言葉は...
『あの、飼い主見つからなかったら、
俺が引き取ります!!』
あれから随分と時が経った。
今も何も連絡がないって事は、きっとあいつは家族の
ところに帰れたんだろうね。
良かった。
君にとってはそれが一番幸せなことだ。
俺はというとね、
少しだけ寂しい。
それが本音。
歳を重ねて大人になって、ガキの頃からの友達や仲間
ともなかなか会えなくなって、仕事に追われたり、家族を
もったり、馬鹿してたあの頃を忘れかけて...
何のために生きてるのかわからなくなって...
それでも君との出会えたことで、忘れかけてた何かを、
少しだけ取り戻せた気がしました。
"マスター"『明日もまた頑張ろう。』
『ありがとう、犬。』
終わり。
※この物語は多少、いや、かなりの付け足しはあります
が紛れもない真実の物語です。
良いことしたからかなぁ。
心優しきお客様達や皆さんから、色んなプレゼント頂きました!
まずは、M子ちゃんにいただいた、クロワッサン鯛焼き。
だったけな?
今だから正直に言いましょうM子ちゃん、
ママに全部食べられました!
まぁ俺があげたんだけどね。
ありがとー!
Hさんからもらったナボナというお菓子。
かなりの有名なお菓子らしいのだが...
甘味に興味のなかったマスター、まったく知らず。
ただ!いただきましたら本当に美味しかったー
H.Hさんごちそうさまでした!
そして、本当に有難し。
またしてもM子穣さまからのプレゼント。
ふなっしーカルパス!!
間違えることなく旨い!
この人は...
ミュージシャンだけでなく、こっちのほうでも食って
いけるんではないだろうか!?
ジャンゴでもお馴染みの人気者ベーシスト、
東郷さんのオリジナル・ライ麦パンだー!!
スコーンやカンパーニュに続きの新作。
ヤバイ!
本人の言う通りに酒のあてにもピッタリ!
みんな買いましょうー
と、このブログだけ初めて見た方。
なんの店?と思うでしょうが...
ジャンゴは美味しいお酒とグッドな生演奏、
楽しい仲間のミュージック・バーです。
どうぞ、お気軽にいらしゃって下さいませ!
バー・ジャンゴのホームページはこちらから。
# by b-django | 2014-08-24 18:34